カテゴリ:上橋菜穂子( 2 )

『隣のアボリジニ』

隣のアボリジニ―小さな町に暮らす先住民
上橋 菜穂子 / 筑摩書房、2000年

「守り人」シリーズで知られる上橋菜穂子さんは、文化人類学者で大学で教えてもいる。作家専業も考えたけれど、作家としての「牙」をみがくためにも、文化人類学者であることを選んだ、と前に読んだことがある。これは文化人類学者としての著作で、オーストリアの都市部に住むアボリジニの人々の様子を、上橋さんならではの注意深く、そして謙虚な視点で描いている。

ファンタジーの世界観につながるようなところもあって、面白い。「伝統を守り気高く生きていくアボリジニ」も、「飲んだくれてドラッグにおぼれ、生活保護に頼って生きていくアボリジニ」。どちらもステレオタイプであり、かつ、一人の人間の中にも同時に存在しうる。世の中ってやっぱり複雑で、一筋縄ではいかない。
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by sheepish_grin | 2006-12-25 23:42 | 上橋菜穂子

『蒼路の旅人』

9月は色々と気を揉むことが多くて、息抜きに本はたくさん読んだけれどブログを更新する気になれず。こっちで職を見つけようと思って、3ヶ月ほどがんばってみたけれど、そろそろ諦めが付いてきたので今月下旬にあるボストンのキャリア・フェアに行ってから日本に帰ることにした。10月に入って何となく気力が復活してきたので、さかのぼって書き留めておこうかな。

蒼路の旅人
上橋 菜穂子 佐竹 美保・絵 / 偕成社、2005年

確か9月3日に読了。日本から送ってもらった。上橋菜穂子、大ファンなので新作が読めるのがうれしい。好きな作家の新作をリアル・タイムで読める幸せ。このシリーズは、女用心棒バルサが主人公の『守り人』シリーズと、新ヨゴ皇国の若き皇太子チャグムくんが主人公の『旅人』シリーズが織り成す大河ファンタジー。巻を追うごとに登場人物も世界観も深みを増していっているシリーズだ。上橋さん、ますます脂がのってこられたわ・・・。新刊発売の間隔も早くなってきたし。

今回はチャグムくん一人立ちの巻。若干15歳で、国家と民の生活を背負わなきゃいけなくなって大変である。心優しい彼が、波乱の時代に国家を背負うためには、優しさを捨てて、したたかな為政者にならないといけないのか、でも優しいままであってほしいと思うファン心をくすぶる(?)終わり方も素敵。公共政策を勉強したわたしとしては、何が一番いい政策なのか、と考えさせらもして面白い。いやーおチャグ、大変だわ・・・バルサは弱き個人を槍で守ってあげればいいからまだ楽かもしれない。

いつも通り脇役も魅力的。チャグムの教育係のシュガさんは24歳なのにストレスがいっぱいで大変。しかし、シリーズ最初の『精霊の守り人』を読んだ時は、シュガさん、わたしより年下だったのに・・・。(『蒼路』作中では、シュガは25歳になっているけれど、これは誤植で24歳だそう。『守り人の洞窟』掲示板の922以下のスレッド参照。ファンは目がさといわ・・・。) 密偵(ターク<鷹>)のヒュウゴさんも渋くてかっこよいし。彼の少年時代が主人公という『炎路の旅人』が書きあがっているけれど今のところお蔵入りだそうだ。ぜひ読んでみたい。

ただ、今回は主要人物に女性が少なくて、ちょっと物足らなかったかも。国家政治の話になると中々難しいのだろうけれど、次回に期待~。
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by sheepish_grin | 2005-10-09 11:11 | 上橋菜穂子